兎徒然

永富 月来子、絵描きです。うさぎと暮らす日々の由無しごとを綴ります。

「ベッカライ・ビオブロートのパン」

「ベッカライ・ビオブロートのパン」、久しぶりに夢中になって読んだ。見知らぬ世界の興味深い対象を専門性の高い知見を持った方が、平易にかたる本に出会えることはあまりない。

  お断りしますが、写真のパンはお店のパンでは無く、自分で焼いたパンです。( ̄∇ ̄)

  タイトルは、お店の名前。

  ベッカライ=ベーカリー

  ビオ=自然農法の(オーガニックの)

   ブロート=ブレッド

  ドイツでマイスターの資格を得た松崎さんは店の名をドイツ語でシンプルに名付けた。

 

  一昨日焼いたパンを食べながら本を読む。

f:id:flemy:20191021174303j:image

 

  芦屋に店を構えるパン職人さんの書いた本だが、進路に迷う学生にもおすすめしたい。人生は仕事ばかりでは無いが、自分はこういうものですと胸を張って言えるような仕事をして、食べていけるのは、とても幸せなことだ。

  しかし、著者の松崎さんの歩んできた道は平易ではない。たんたんとした文章なので、想像力に乏しい人には苦労が伝わらないんじゃない?って言いたくなるくらい。でも、この大げさに自分を語るでもない、朴訥とした文体に、松崎さんの人間性が現れているのだろう。

f:id:flemy:20191021174506j:image
f:id:flemy:20191021175545j:image

 

 

  大学時代にやりたいことがなかった著者は、資格でもとっておこうと資料を集めた時に、資格取得の講座を主催する会社の求人情報をみつけた。社員は講座を無料で受講できるという理由から、その会社に就職する。とりあえず簿記二級を取得し、司法書士を目指す心でいたが、働くうちに、 何がしたいか、何をしたくないかを自分の心に問うようになったという。

  司法書士が本当にやりたいことではないと気付き、自分のやりたいこと、適正をみきわめた上でパン職人を志す。

 日本で製パンの学校へ通って2.3年働いてから海外で修行してパン屋になる、そんな青写真を描いた彼は、大阪阿部野調理専門学校の製パン科を受験するが不合格…そこからの道のりは、神の采配という言葉がピタリとくるような、人生の転がってくる明暗をすべてパン職人への階段にしていく。その行動力たるや…。

    

   これ、古本屋で買いました!発酵種が詳しくのっている。けど、簡単にパンを焼きたい人にはオススメしません〜

パンの基本大図鑑

パンの基本大図鑑

 

 

  自分の感覚を信頼できるという松崎さんは意志の人だ。自分の感覚を信じることってなかなか難しいこと。(根拠がなさすぎる自信を持ってる人はやたらいるけど、そういう人はいつも道半ばでひきかえすことになる。)

  松崎さんに、「お前はこの仕事に向いてないから辞めてしまえ」と言い放った先輩がこの本を読んだらどう思うだろうか、とちょっと意地悪な感想をもつ。

 

  前半は「仕事をする上で大切なもの」への気付き、後半は専門的なパン作りへの試行錯誤が具体的に語られている。

  筆者は   なんでそうなるか」 が知りたいという。それがわからないままパンを作ることができないと感じてドイツまでいった。

  ここ数年で、料理本を読むのが好きになったけれど、2005年ごろから、なんでそうなるかが書いてある料理本はガクッと減る。パンを作り始めて一年あまりだが、現行される出版物に、私が求めるものが掲載されていない、と感じた。もちろんプロ向けの本には載っている、が、パンがなんで膨らむか、一次発酵でパン生地に何が起こるかわからないど素人が読んでも、記述が専門的すぎてよくわからなかった。

対して素人向けの本には、レシピが載ってるだけで、何も役に立たない。同じ材料を揃えて、同じ工程で作り、パンが膨らめば、たしかに何も問題はないんだけど…、それじゃいつまでたってもパン作りを習得できない。

  肉じゃがとか、おひたしや、厚焼き玉子みたいな感覚で、パンを作りたかった。

  古本屋で見つけた昭和のパンの本はどれも詳しく、わかりやすく、パンのいろはの解説があって、それからレシピが始まる。イーストの作用や、パンが膨らむ条件が知識として頭に入ると、これまで捏ねてきた感覚と、ピタっとハマった気がして、パンが外国の食べものではなく、わたしの家庭料理の一つになった。 本の後半、発酵種やミキシングへの言及は、今まさに知りたいことであった。アーベントタイク(低温長時間発酵)がヨーロッパでは昔から行われていたと知り驚く。日本でも昭和18年の本で触れられてるんだそう。最初パンを作り始めたとき、冷蔵発酵なんて邪道っぽいとか思っていた自分が恥ずかしい。

  ドイツの学校で、東ドイツ時代の教科書の内容の方が良かったときいた松崎さんは、古本屋をまわって古書を手に入れたそうで、国や時代は違えど同じようなことがあるのかもな、と思った。

 

f:id:flemy:20191021175652j:image

  本を読んで思ったけど、パン職人と陶芸家の仕事って似ている気がする。
f:id:flemy:20191021175701j:image

  バリバリの理系だけど、感覚が大事なとこや、自然素材を捏ねて窯で焼くところ。
f:id:flemy:20191021175657j:image

  経営の上でこなせなきゃならないポイントもかなり近い。
f:id:flemy:20191021175647j:image

   わたしのパン、なんでこんな古代のパンみたいになるんや…笑

  

  ベッカライ・ビオブロートのパンは、もしかしたらドイツ現地のパンより、昔の本来のドイツパンの風味をたずさえてるかもしれないと期待する。でも松崎さんもドイツ人も酸味の強いドイツパンはあまり好まないそう。近いうちに芦屋にパンを買いに行こう!( ・∇・)

  なんと、粉の鮮度にこだわるあまり、石臼を輸入して自家製粉しているそう!!石臼、いいなぁ…。

 

  

 

ベッカライ・ビオブロートのパン

ベッカライ・ビオブロートのパン